下肢静脈瘤は早期発見と治療が必要ブログ:04月07日


当時のあたくしは、
とある都市の大きな企業に勤め、マンションで一人暮らし。

ごく稀に母親が田舎からあたくしのもとを訪ねることがあった。
おいしいものを食べに行こうというあたくしに、
母親は親子水入らずで、のんびり部屋で過ごしたいと
わざわざ重たい野菜を抱えてやってくる…

ある日、仕事から帰ったあたくしは、
オートロックのロビーから部屋いる母親に
「ただいま。あけてー」
インターホン越しに呼びかけた。

ところが、母親からの返事はなく、
マンション中に非常ベルの音が響き渡った。
母親が部屋の開錠ボタンと非常ボタンを押し間違えたのだ。

ロビーで頭を抱えるあたくしのもとへ、
青ざめた母親がやってきた。
あたくしは恥ずかしさのあまり母親をひどく責めた。

騒動の後、部屋には
母親が作った夕飯のにおいが立ち込めていた。

田舎から持ってきた野菜の和え物、
帰るタイミングにあわせて焼かれたであろう焼き魚、
細かく刻まれた葱の浮かんだ味噌汁に、揃えられた二人分の箸…

ショックの余り俯いて手をつけない母親をよそに、
気まずい中、冷めた料理をあたくしは黙って食べた。

あれからあたくしも二児の母親になり、
7〜8年たった今になって
あの出来事を頻繁に思い出すようになった。

恥ずかしいのは母親ではなく、
つまらない見栄で
かけがえの無い時間を台無しにしたあたくしだった。

今さらと思いつつも母親に言った。
「お母さん、あの時ごめんね」

意に反し、母親はその時の恐怖を、
近くにいた兄と笑い話のネタにしてケラケラ笑っていた。
あたくしが責めたことなど忘れているようにみえた。

それでも、母親を思う時、
あたくしは真っ先にあの出来事を思い出す。

そして
「大したことないよ」
そう言えなかった自分を悔やみ続けると思う。
あの日の冷めてしまった母親の手料理の味とともに…

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